Japan EXPO Thailand(ジャパン エキスポ タイランド)について
毎年1月~2月頃に開催されるJapan EXPO Thailandを取材して出展のメリットやデメリットを記事にまとめました。
Japan EXPO Thailandの立ち位置とは
タイの首都バンコクは毎年数多くの展示会が開催される。業種的に多種多様な展示会があり、世界中の企業が注目する。
タイ展示会のメリットは、タイ国内マーケットだけでなく、東南アジア全域、場合によっては欧米エリアの顧客獲得を狙えることだ。
そのため、東南アジア区域ではシンガポールが経済的に群を抜いて発展しているものの、実質的には今バンコクがワールドワイドなビジネスのハブになると言っても過言ではない。
そんな中で、我々日本人が注目したいのは観光業だ。タイは現在空前の日本旅行ブームに沸いている。
タイ国際航空が直行便を札幌に出したことで雪祭りで人気に火がつき、それに呼応するように日本政府がタイ人への短期査証の免除を決めた。2013年7月からタイ人はビザなしでおよそ2週間ほど日本に滞在できるようになり、日本観光が大人気となっている。
旅行博とはややジャンルが異なるが、日本紹介に特化したイベントとして、毎年1月2月ごろに開催されるこの時期の風物詩だ。毎年3日間ほどの開催で、期間中にはおよそ50万人が訪れることから、日本特化イベントとしてはアジア最大級の規模とも言われる。
17のエリアで日本を紹介するJapan EXPO Thailand
会場は日本のデパート「伊勢丹」も入居するタイ最大の商業施設「セントラル・ワールド」です。地理的にも商業的にもバンコクの中心地なので好立地での開催となる。
会場も商業施設の内外に特設される。そのため、ジャンルごとにエリアが分かれていることから、訪問者は好みのエリアに足を運ぶことができ、目的に到達しやすいというメリットがある。
外からも注目される目立つエリアはセントラル・ワールドの外正面で、2つのステージと「日本の食とスイーツ」と題した飲食エリアがあった。
ステージでは日本のアイドルなどを招いてライブやイベントを開催するので、近隣を歩いている人の目を引くことにも成功している。飲食エリアはテントを張り、タイの日中の日差しを避けつつも、軽食的な日本の食べものを楽しめるようになっていた。
施設内は商業施設の通路などを利用して、「ジャパン・プロモーション」、「トラベル」あるいは「旅」といった観光誘致のエリア、日本のアニメやゲーム、アイドルなどサブカルチャーのようなジャンルを扱う「カルチャー」エリア、それからやや離れた階になるが、このイベントの前身である日本留学フェア会場が用意されていた。
ミーティングポイントなども合わせると合計17のエリアがあり、TITFやFITのように観光一点張りのイベントとは違っている。
TITFよりもJapan EXPO Thailandにメリットを感じる企業
Japan EXPO Thailandに出展する企業は旅行代理店のほか交通機関、自治体の観光関連部門などTITFやFITと共通する企業名が散見される。
ブースのサイズ感は2020年1月度のTITFと比較すると、感覚的にほんの少し狭いという印象はある。TITFは広大なコンベンションセンターでの開催であり、Japan EXPO Thailandは商業施設の通路であるため、間口はともかく、奥行きを出せないエリアもあったためだ。
しかし、出展していた日本企業の担当者にお話を伺うと、「TITFの日本(JNTO)ゾーンよりもJapan EXPO Thailandの方がブースの使い方の制限が少ないため、思っている展示にすることができる」という、TITFとは違った大きなメリットがあったようだ。
展示内容に制限があるTITFの日本(JNTO)ゾーンはそこがネックとも言われ、比較的自由なJapan EXPO Thailandの方に魅力を見出す企業もあるわけだ。
先の日本企業の担当者によれば「Japan EXPO Thailandの方が手応えがある印象。今後もJapan EXPOへの参加は積極的にしていきたいという考えがある」というほど、このイベントへの参加にメリットを感じているようだ。
TITFよりも若い層が訪れるJapan EXPO Thailand
Japan EXPO ThailandがTITFと明確に違う点が2つある。まずひとつめは訪問者の年齢層だ。
先述の通り、Japan EXPO Thailandは観光・旅行に特化したイベントではない。
むしろサブカルチャーに力を入れている面が強く、日本のアイドルやアニメ、コスプレイヤーの一大イベントとして認識されている。そのため、年齢層が10代後半から20代が圧倒的に多い。
タイではいわゆる「オタク」と呼ばれるようなアイドルやアニメの愛好家は、多くが30代にさしかかる前で自らその趣味をやめてしまう傾向にある。
年齢層が日本の愛好家たちよりも低めになるため、Japan EXPO Thailandの客層もまた若い人が多くなる。
また、そういったグループ層が来るため、どちらかというと友人や仲間同士で来るという傾向が強い。
一方、TITFは家族連れや夫婦などが多く、30代40代が中心という傾向にあった(これは企業によって印象が異なるが、平均的な年齢層)。
また、郊外のコンベンションセンターでの開催ということもあり、わざわざ足を運ぶ必要があった。すなわち、日本旅行へのモチベーションが高い、なんらかしらの目的を持って来ている人が大半ということだ。
目的という面では、多くの若者がアイドルやコスプレなどを目当てに来ているので明確ではあるものの、観光業者からするとJapan EXPO ThailandはTITFほど自社商品に目的を持って来てくれる訪問者は少ない。
TITFに参加していたある民間交通機関はチケットやツアー販売、旅先情報などを展示していたが、Japan EXPO Thailandでは日タイのイラストレーターを招致して実演を行って日本の若いカルチャーを広げる活動を前面に出し、TITFとは出展内容を差別化していた。それほどに客層が違うのである。
多くの人を長い目で見て取り込めるのがJapan EXPO Thailandの魅力
では、日本の観光業界においてJapan EXPO Thailand出展はメリットが薄いのかというと、そういうことでもない。それがJapan EXPO ThailandとTITFの明確な違いのふたつめの事情である。
それは、タイ最大級の商業施設であるため、Japan EXPO Thailandあるいは日本旅行を目的としていない人を取り込むことが可能であるという点だ。
会場となった「セントラル・ワールド」はタイ最大のデパートチェーン店であり、グループ最大の売り上げを出す場所でもある。
先の日本企業の担当者が「手応え」を感じていたのは実はこの部分でもある。TITFは目的意識が高い分、狙っている商品以外には目もくれない人が多い。あるいは会場内の競合と比較されてしまい、顧客獲得のチャンスが遠のくケースもあるだろう。
しかし、Japan EXPO Thailandはたとえばたまたま通っただけ、または表のステージの迫力に釣られてふらりと立ち寄る人ばかりなので、会場に足を踏み入れている時点では特に目的がない。
そのため、真っ白なノートに文字を書き込むように出展者側の紹介をよく聞いてくれる傾向があると、複数の出展者が話してくれた。
TITFは日本旅行を目的とするタイ人を取り込むことができるため、結果が早めに出ることも多いというメリットがある。しかし、相手も勉強してきているので、うまく興味を持ってもらうにはそれなりの施策が必要だ。
一方、Japan EXPO Thailandはすぐに日本に行きたい人はあまり多くないため、早急な結果が伴わないかもしれない。しかし、幅広くPRできるため、長い目で見ると大きな魚になる可能性も秘めている。Japan EXPO Thailandはそんなイベントであると感じた。
「文・取材 高田胤臣」